2012年1月15日に発行された中日新聞朝刊記事を紹介します。
豆腐の呼び方は、中国語では「ドウフ」、韓国語で「ドゥブ」、英語は「tofu」です。中国で生まれ、今や世界の多くの国や地域で食べられるようになった豆腐。モノとしての普及より、華僑による食文化の継承によるものが多いのです。、近年は、玄米菜食を基本としたマクロピオティックや、菜食主義のような考えで、先進国 の生活習慣病対策で、健康的な新しい食材として見られるようになりました。
米国のスーパーでは、日本の包装形態と同じような木綿豆腐を野菜売り場で売っています。無菌パックに入れた日本メーカーの充填豆腐もあります。米国人にとって豆腐は 野菜の仲間で、サラダやジュースの素材という意識が強いようです。バーベキュー好きな国民性ゆえにヒットした生揚げのバーベキューソース漬けという商品もあります
本場・中国では、干し豆腐がよく食べられ、これは薄く作った木綿豆腐を油圧で徹底的に水を切ったシート状のものです。麺状に切ったあえ物や生春巻 きのようにして使います。日本でいう湯葉の厚くて堅くなったイメージです。豆腐のハムも多く出回っています。プレスハム状で、肉の代わりに水切り豆腐を使い、香辛料と着色料を加えたハムもどきです。ほかにも臭豆腐(チョウドウフ)があり、焼いたり、揚げたりして食べます。ちょうど日本のクサヤのような製法で、発酵液に豆腐を漬け込んで食しますが、強烈なにおいです。
国外ではシロップをかけたり、ドレッシングをかけたりと味付けこそ違いますが、多くの場合、同じ白くて四角い豆腐を食べています。その中でも日本式 の煮搾り法が浸透しているのは、おいしさと同時に日本の豆腐機械メーカーの技術が、突出して優秀ということがあります。
世界的な豆腐文化は大豆の普及、栽培という大きな背景があって初めてできました。大豆は中国が原産で、日本では縄文時代の遺跡からも出土しているほど古い穀物です。欧州や北米に渡ったのは、意外に近代(十八~十九世紀)になってからです。大豆は根粒菌という窒素固定菌を根に持っており、これが空気中の窒素を取り込み、大豆の根から吸収され、結実した種子にタンパク質を蓄積します。肉並みのタンパク量があり、空気中の窒素の固定化ができる植物は少なく、畑の肉と呼ばれるゆえんです。土中の栄養素を多く求めないので、やせた土地でも育つ数少ない植物でもあります。
アフリカの飢餓地帯で大豆を育てて豆乳を作り、凝固剤には樹液の発酵物を使って豆腐状のものを作るというNGOもあると聞きます。豆腐(豆乳)のような食べ方は、チーズやヨーグルトといった乳製品の文化のある所では、抵抗なく食されます。穀物を大量に使う牛肉・豚肉の生産に比べ、効率的な大豆食文化の先鋭「豆腐」が、これからの人類の食糧問題を解決するキーワードになるでしょう。たかが豆腐、されど豆腐!
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中日新聞朝刊 連載「味な提言」